水族館の人気者「チンアナゴ」。チンアナゴがいる水槽を見ていると、その名前について様々な反応が聞こえてきます。みなさんチンアナゴの「チン」が気になるようです。
一体なぜ「チンアナゴ」という、ちょっと恥ずかしい(?)名前がつけられたのでしょうか。チンアナゴの「チン」とは何なのか? 気になる事情を解説します。
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チンアナゴのチンは犬のチン
チンアナゴは、魚類学者の阿部宗明博士によりチンアナゴと命名されました。1979年に発表された、日本に生息するチンアナゴの仲間を紹介する論文にこのような記載があります。
新和名 チンアナゴ
(英文誌のため要約 原文は以下)
狆(チン)とは日本のパグのこと。このアナゴのおもしろい目や頭が日本のパグを思い出させる。
チンアナゴと犬のチンを見比べてみよう
さて、チンアナゴの由来は犬の狆(チン)である事がわかりましたが、実際に犬の狆(チン)を見た事があるという人は少ないのではないでしょうか。日本のパグと言われてもあまりピンと来ないと思うので、チンアナゴと日本犬の狆(チン)を写真で並べてみました。
いかがでしょうか?丸っこい頭に大きな目、突き出たアゴの感じが確かに似ている気がします。チンアナゴは意外と小さいので、肉眼で顔の特徴まで観察することは難しいのですが、研究の過程で何度も顔を眺めているうちに狆(チン)に見えてきたのかな…と想像すると、研究者らしい命名と言えるのかもしれませんね。
ちょっと困った漢字の話
生物の和名はカタカナで表されるため、正式な漢字というものは基本的に存在しません。ですが、チンアナゴの場合は犬の狆(チン)が由来である事がはっきりしているので「狆穴子」と書くことに異論はないと思います。ところが、どういう訳か「珍穴子」という漢字も広く使われており、辞典によっては「珍穴子」が一般的とさえ書かれています。
「珍穴子」の漢字が広まった経緯は不明ですが、珍しい生態やheterocongerという学名からのイメージで「珍」の字を当てたのではないかと想像します。あるいは、「狆」が一般的な漢字でないことも影響しているのかもしれません。
まとめ
以上、チンアナゴの「チン」についての解説でした。この由来も最近でこそ知られるようになってきましたが、ほんの10年ほど前までは知る人ぞ知る情報でした。今度チンアナゴや犬の狆(チン)を見かけたら、ぜひお互いの姿を想像してみてくださいね。